心の不調による労災請求件数は12年間で約30倍
なぜ今、企業などの組織がメンタルヘルス対策に取り組むことを求められているのか。この疑問の非常にシンプルな答えとして、「働く人の心の不調が増えている」ということがあります。 厚生労働省が2011年6月に発表した資料によると、1998年から2010年の12年間で、精神障害に関わる労災の請求件数は30倍近くに増えています(グラフ1)。このうち、2010年度のデータを詳しく見ると、労災支給決定件数の多い業種は、「社会保険・社会福祉・介護事業」「医療業」「情報サービス業」「道路貨物運送業」「食品製造業」の順となっており、職種では「一般事務」「商品販売」「自動車運転」「法人・団体管理」「営業・販売事務」となっています(表1・2)。また、年齢層別に見ると、30歳代が最も多く、次いで40歳代となっています(グラフ2)。
厳しい時代を乗り越えるためにも、今できる対策を
心の不調を訴える従業員が増えれば、組織としては、配置転換や休職といった対応を取らなければなりません。人員配置の見直しだけでなく、新たな教育訓練を行う必要が出てくる場合もあるでしょう。人的にそれなりにゆとりのある大企業であれば、対応も比較的スムーズにいくかもしれませんが、中小企業の場合は、なかなかそうもいきません。一時的であっても、業務の停滞・混乱が起きやすくなったり、残った従業員への負荷となったりすることで、職場のさらなるストレス要因ともなりかねません。不調者が、最も生産性を期待したい働き盛り世代となれば、なおさらです。当然ながら、経営効率は追求しにくくなるでしょう。 このように、心の不調は、従業員個人の職業生活のみならず、経営効率化にも関わる問題でもあります。組織の持てる力を遺憾なく発揮し、従業員とともに厳しい時代を乗り越えるためにも、今できる対策を打っておくことが大切です。