「人生の正午」に訪れる不安
前回、「五月病」について述べました。「五月病」とは、進学や就職で環境が大きく変わったようなとき、期待や不安で緊張して過ごす最初の時期が過ぎると、今の自分が置かれた立場と理想とのギャップに悩んだり、新たな目標を見出せなくなったりして、気力が失われてしまう状態です。若い方が陥りがちですが、実は、中高年の中にもこれと似た状態は見受けられます。
それは、「ミドルエイジクライシス(中高年の危機)」と呼ばれるもので、ユングが「人生の正午」と呼んだ40歳前後に多く見られます。20代の頃と同じ気持ちでいたのに、もう若くはなくなっている。そうなると、気持ちが現状に追いつかず、目標をどう定めて良いか分からなくなってしまうのです。といわれる状態です。
周囲には分からない悩み
「ミドルエイジクライシス」は、ずっと弱音を吐かずにきた人、仕事や家庭が比較的順調だった人など、「なぜ?」と思えるような人たちが陥りやすいのも、高学歴の方に多い「五月病」と似ています。がむしゃらに頑張って、ふと気づけば、職場では管理職となり、自分の行く末も何となく見えてくる。一方、家庭では必死になって子供を育てる時期から、親の介護や自分たちの老後を考える時期になってくる。さらには、体力も衰えてくる。それまでが順調であればあるほど、目の前に見えてきた現実の前に自分が無力であるように思え、人生の「限界」を感じてしまうのではないでしょうか。
最近、はたから見れば着実に歩んでいて何も問題がないと思える人が、突然自殺して周囲に衝撃を与えることが、少なくありません。その中には、「ミドルエイジクライシス」から抜け出せなかった方も、かなり含まれているように感じられます。
自分なりのビジョンを持つこと
もしも、自分が「ミドルエイジクライシス」に陥っているように感じたら、まずは、頑張り続けてきたこれまでの流れをリセットしましょう。そのためには、休みを取る勇気を持つことが大切です。
「みんなに迷惑をかけるから、休んでなんかいられない」と思われるかもしれませんが、意外と何とかなるものです。そして、仕事や家事から離れて、自分なりのビジョンを考えてみてはいかがでしょうか。これからの人生で、自分は何をやりたいのか、どうありたいのかを考え、それをビジョンとして持つことで、新しい目標も生まれてくることでしょう。自分なりのビジョンを見つけることが、「生きる力」の再生へと繋がるように思います。
1992年、カウンセリングルームを開設し、個人での業務を開始。2005年、業務拡張に合わせて法人化。代表に就任。さまざまな人や企業との出会いにより日々成長し続け、現在に至る。