強迫性障害を生む「こだわりの時代」
主観ではありますが、現代は、こだわりの強い時代であると感じます。こだわりというと、「こだわりのラーメン」とか「こだわりの逸品」といったように、プラスのイメージで捉える方が多いのではないでしょうか。確かに、そういった一徹さは、素晴らしい成果を生み出す原動力になるかもしれません。しかし、それが「拘泥する」「自分の考えに凝り固まる」という方向に向くと、“心の柔軟性を欠いた状態”でバランスを崩すことになり、引いては、強迫性障害(OCD)を生む遠因となっているように思えるのです。
自分の考えや行動が制御できないつらさ
強迫性障害(OCD)は、かつては強迫性神経症と呼ばれていた心の病気です。頭の中に不快な考えが繰り返し起こり、それを打ち消すために、不合理な行為をしてしまうのが主な症状です。たとえば、手にばい菌がついているように思えて、何度も手を洗ってしまうとか、必要な物を間違って捨ててしまうかもしれないという考えに捉われ、何も捨てられなくなってしまうといったことです。本人もおかしいと分かっているのに、自分の考えや行動がどうしても制御できないことが、この病気のつらいところです。「片付けられない女」や「買い物依存症」なども、広い意味では強迫性障害(OCD)の症状と考えられるでしょう。
物理的な視界の狭さが意識の視界を狭める
強迫性障害(OCD)を起こす原因は、心理的要因と脳の機能的要因が複雑に関連していると考えられていますが、完全には分かっていません。ただ、私がカウンセリングをして実感していることは、強迫性障害に悩む多くの方が、視界が狭くなっているということです。現代は、社会人の多くがビルの中で仕事をしています。そして、1日中パソコンのモニターを見つめているようなことも珍しくありません。物理的に視界が狭くなることで、気持ちも内へ内へと向かっていく傾向にあります。こうなると、意識の視界も狭まり、自分の考えに凝り固まってしまいがちです。そこに強いストレスが加わるなどが引き金となり、強迫性障害(OCD)を発症することは、少なくないのではないでしょうか。
空や海を見て凝り固まった頭をほぐす工夫を
ですから、もしも自分が不必要なこだわりを持っていると感じたら、意識的に視界を広げることをしてみてはいかがでしょうか。たとえば、仕事の合間に5分間、パソコンのモニターから目を離して、窓の外を見てみましょう。休日は、たまには海や山へ出かけて広大な景色を眺めましょう。遊園地の観覧車に乗って遠くを見たり、家のベランダや庭先から空を見上げたりするだけでもいいと思います。物理的な視界が広がれば、意識の視界も広がり、凝り固まった頭もほぐれてくるはずです。
1992年、カウンセリングルームを開設し、個人での業務を開始。2005年、業務拡張に合わせて法人化。代表に就任。さまざまな人や企業との出会いにより日々成長し続け、現在に至る。