原因のひとつは現実とのギャップ
新年度が始まって2カ月が経ちました。この時期、心の問題で気をつけたいのが「五月病」です。
進学や就職などで自分を取り巻く環境が大きく変わるとき、多くの人は心に期待を持つものです。新しい仕事、新しい課題、新しい人間関係に対して、自分なりの理想を掲げて新しい環境に飛び込み、精一杯努力しようとします。ところが、いざ始まってみると、必ずしも自分の思いどおりにいかないことが分かってきます。せっかく頑張ろうとしていたのに、与えられる課題がつまらないものばかりに思えたり、上司や先生が、まったく自分を分かっていないと感じたり。そして、「なぜ、ここでこんなことをやっているのだろう」「自分はもっとできるはずなのに、活かされていない」といった思いに捉われ、気力を失ってしまう。あるいは、厳しい就職活動や受験勉強に夢中で取り組み、無事に入社や入学を果たしたのはいいけれど、目標を達成するとそれまでの緊張がほどけて疲れが表れ、何をするのも面倒になってしまう…といったケースもよく見受けられます。これが、「五月病」といわれる状態です。
今が未来に繋がらない不安
「五月病」と病名のような名前で呼ばれるため、しばしば誤解されがちですが、「五月病」は心身の「状態」であり病気ではありません。また、必ずしも5月に陥る状態を指すものでもありません。ゴールデンウィークを過ぎた頃から6月頃にかけて、新社会人の場合は、新入社員教育を終えて配属されてしばらく経った8月、9月頃に出ることもあります。
また、一般的な傾向としては、成績の良い方、高学歴の方がなりやすいようです。こうしたことから、今の自分がやっている(やらされている)ことが、明るい未来に繋がらないように感じられると、五月病に陥ってしまうと考えられます。
心身の素直な反応と考えてみる
上司や先生、親御さんにとっては、このような状態にある若者を心配すると同時に、「なぜ我慢ができないのか」と、どこか不甲斐なく思えるのではないでしょうか。でも、人生の先輩でもある皆さまにお願いしたいのは、彼らに、今やっていることが将来にどう繋がるかを伝えていただきたいということ。誰でもできるようなこと、雑用に思えるようなことにも、組織のため、自分の将来のために意味があるのだということを、面倒がらずに教えていただきたいと思います。
また、今まさに「五月病かも…」と思っていらっしゃる方は、あまり深刻に悩まず、「人生にはこういう時期もある」と思ってみてはいかがでしょうか。東洋では、春は、陰から陽へと移り変わる時期といわれています。変化の時期は、人間の心身も不安定になりがちです。心身の素直な反応だと考え、まずは気楽に、前向きに過ごしてみると良いのではないでしょうか。
1992年、カウンセリングルームを開設し、個人での業務を開始。2005年、業務拡張に合わせて法人化。代表に就任。さまざまな人や企業との出会いにより日々成長し続け、現在に至る。