今の世の中は、価値観が多様化しているといわれています。確かに、ひと昔前、ふた昔前に比べると、生き方の選択肢は格段に拡がっています。たとえば、私たちの両親の時代は、就職したら定年まで同じ会社に勤めるのが当たり前でしたが、今や、全就業者の約半数が転職を経験しているのだそうです。
でも、それは本当に良いことなのでしょうか。価値観が多様化したのはいいけれど、今度は、たくさんの選択肢から何を選べばいいのか分からなくなり、人々はかえって不安を募らせているのではないでしょうか。
ネットワーク社会の中でより深まる孤独感
また、携帯電話やインターネットによって、人は、いつでも、どこでも、誰とでも、自由自在につながることができるようになったといわれています。これも、確かにそうだと思います。
でも、出会い系サイトが犯罪のきっかけとなったり、ブログが無責任な個人攻撃の場となったりと、顔が見えない同士のつながりはトラブルも起きやすいもの。結局のところ、人々は孤独の中から抜けることができずにいるように思えてなりません。近年、強迫性障害やうつ病といった心の病が急増していますが、その背景には、こういった自由すぎる社会が、逆に不安感や孤独感を生み出しているのではないか、そして、そのことで感じるストレスが無視できないと思われます。
「複合的チームケア」を目指して
複雑な現代社会の中で、凝り固まってしまった心をほぐすお手伝いをするのが、私たちカウンセラーの役割です。もちろん、それはカウンセラーだけが担当するものではありません。心療内科医や精神科医、看護師、保健師、薬剤師といった医療に従事する方々との連携は非常に重要です。また、心と体は不可分ですから、心の凝りをほぐすには、体のケアも必要だと私は考えます。
ですから、マッサージや整体、鍼灸、さらには、ナチュロパシーやホメオパシーといった自然療法の分野とも協力し合い、トータルにストレス対策ができたら、それこそ理想的だと思います。一朝一夕にはいきませんが、いつかそんな複合的なチームケアを実現したい。それが、私のひそかな夢となっています。

1992年、カウンセリングルームを開設し、個人での業務を開始。2005年、業務拡張に合わせて法人化。代表に就任。さまざまな人や企業との出会いにより日々成長し続け、現在に至る。