こってり料理はストレスサイン!?
忙しく仕事をしている方の話をうかがっていると、ストレスと食事は密接な関係にあると実感させられることが、しばしばあります。たとえば、「仕事をしながらお菓子を食べ続けてしまう」とか、「夜遅く帰宅してから大量の食事を摂ってしまう」といった、バランスの悪い過食的な行動も、そのひとつです。
ストレスを感じたとき、多くの人は、脂っこく味の濃いものが欲しくなります。これは、浜松医科大学の高田明和名誉教授の研究によると、脳が疲れたときに糖分や脂質、コレステロールを必要とすることが原因だということです。身体のメカニズムとしては理にかなっているのでしょうが、糖分や脂質の多いお菓子や食事を多量に食べる過食的な行動は、メンタルヘルスの観点からはもちろん、成人病予防の観点からも、見過ごすべきではありません。もしも、自分はいつもよりこってり系のものを多量に食べる傾向にあると感じたときは、「これはストレスサインかも?」と思って、ここしばらくの日常を振り返ってみましょう。
栄養だけではない「食べることの意味」
過食や拒食といった摂食障害とは違いますが、もうひとつ、メンタルヘルスケアの観点から、ストレスと食事について興味深く思っていることがあります。それは、「食事には栄養以外にも意味がある」ということです。
仕事で外食が多い人から、「外食ばかり続けていると、なぜか疲れてくる。質素で構わないので、家のご飯が無性に食べたくなる」という話を聞くことがあります。また、最近、何かで知ったのですが、みんなで一緒に朝食を食べる喫茶店があるそうです。来店客は、それぞれが“お一人様”なのですが、みんなで同じ食卓に着き、喫茶店のモーニングメニューを食べるのです。顔見知りになった人とおしゃべりをしながら朝ご飯を食べることで、気持ちよく1日をスタートできるようで、単身者の人気を呼んでいるとのことでした。
プロがつくった栄養バランスの良い食事でも、そればかりでは、心は満足しないのです。心にとっては、「何を食べるか」だけではなく「どのような食べ方をするか」にも重要な意味があるのではないでしょうか
心に栄養を与える食べ方を
心が満たされる食事は、以前は家庭でお母さんが出してくれたものでした。しかし、共働きが増えたことやライフスタイルが変化したことで、現代は、それも難しくなってきています。また、昨今はコンビニの調理済み食品も、栄養価やカロリーの面はもとより、食品添加物についても考慮された商品が並ぶようになってきていますので、必ずしも、心と体の健康のためには家庭で自炊するべきだとは思いません。
とはいえ、「顔が見えない誰か」ではなく「その人」に向けてつくられた食事には、味や栄養の他にも「何か」があって、それが心に栄養を与えているように感じられてなりません。コンビニ食や外食が多い方は、たまには気分転換や家族サービスを兼ねて、自分自身や家族のために食事をつくってみては、いかがでしょう。どんなものでも、きっと美味しく感じられると思います。
1992年、カウンセリングルームを開設し、個人での業務を開始。2005年、業務拡張に合わせて法人化。代表に就任。さまざまな人や企業との出会いにより日々成長し続け、現在に至る。