行動の自由と心の自由

私たちは、さまざまな自由があります。結婚・職業の自由、好きな洋服を身にまとう自由、世界中ほとんどの場所へ旅する自由。好きな本を自由に読むこと、言いたいことを自由に発言すること、住みたい場所に自由に住むこと…。自動車を運転することや、さまざまな商売をすることなど、免許を持ちルールを守れば自由にできることも、とてもたくさんあります。では、心の自由はどうでしょうか。自由な心で、人生を楽しむことができていますか？

なぜ心は不自由なのか

たとえば、好き嫌いの感情に左右され、それで外の世界を見ているようなことはないでしょうか？このようなとき私たちは、自由な心から離れ、限定された視野で物事を判断している場合が少なくありません。いわゆる「思い込み」や「こだわり」が生じやすい状況といえるでしょう。「思い込み」や「こだわり」が生じれば、心はますます自由でなくなってきます。もしかすると、私たちは、感情や過去の記憶などの色メガネをかけて外界を判断し、知らず知らずのうちに、自ら心に苦しみをつくっていることが多いのかもしれません。たくさんの自由を得ているけれど、心の自由を手にいれている人は、案外少ないのではないでしょうか。

心というブラックボックス

心には、さまざまな体験にまつわる記憶が無限大に刻まれています。忘れている記憶もありますが、それも常に私たちの心に影響を与えています。心が過去の記憶に影響されて動揺しているとき、不安・怒り・悲しみ・寂しさ・喜びなどのさまざまな感情や思考が次から次へと浮かび、私たちはそれに支配されてしまいます。これが、自由な心を望みながらも不自由に生きてしまう一因です。でも、そのほとんどは無意識レベルで自動的・瞬間的に生じるもので、自覚されることはほとんどありません。心は、その持ち主である「自分」でさえも理解とコントロールが難しいブラックボックスなのです。

心の自由に向かって

心の豊かさ、心の自由、精神性、心の成長、心の闇と光…。心のさまざまな側面について、臨床心理士という仕事を通じて、また一人の人間として、長年深くかかわってまいりました。そして、これからも一人の人間として、家族・社会の一員として、日本人・地球人として、皆様方と共に、心を探求し、自由な心を求めていきたいと思っています。

師走は大掃除のときです。心のクリーニングも、ご一緒になさってみてはいかがでしょうか。座禅や月を眺めながらの瞑想もお勧めです。最初のうちは、眠くなったり、あれこれ雑念が湧いてきたりするものですが、慣れてくると、記憶や感情に影響されない穏やかな時間が訪れるようになります。そうしてときどきは心のホコリをはらって、少しずつでも「自由」に近づいていきましょう。