世界でたった一人の「自分」を大切にする
カウンセリングの心理学では「I’m OK」という気持ちを大切にします。
「I’m OK」とは、どういう意味でしょうか? 直訳すると「私はOKだ」となります。「OK だ」とは、「大丈夫だ」「正しい」「価値がある」「大切だ」というような意味です。つまり、「I’m OK」とは、「私は、正しい・価値がある人間だ」という気持ちを持っているということです。しかし、これは「自分はダメなところがない。すべて正しい」ということとは違います。「ダメなところ、直したいところは持っているが、それも含めて自分自身。世界に一人しかいない大切な人間なのだ」という気持ちです。自分のことをよく知って、ダメなところと良いところを併せ持った自分を、まるごと引き受ける気持ちが「I’m OK」です。
「I’m OK」という気持ちを持てるようになると、次には「You’re OK」という気持ちが持てるようになります。つまり、相手をそのまま受け入れ、大切にする気持ちは、自分を認め、大切にする気持ちから生まれてくるのです。「I’m OK」でなければ「You’re OK」も難しく、相手を信じきれなかったり、人間関係がうまく築けなかったりして、心が荒んでいってしまうこともあります。反対に、「I’m OK. You’re OK」という気持ちでいられると、人間関係もより温かく、より満たされたものになっていくでしょう。
まずは、「自分の良さ」に気づくこと
それでは、「I’m OK」という気持ちは、どのようにして育まれていくのでしょうか? それは、まず自分で自分の良いところに気づくことが出発点になります。
今までに、自分自身の良いところについて考えた時間と、良くないところについて考えた時間は、どちらが長いでしょうか? 良くないところには気づくけれど、良いところにはあまり気づいたことがない。「なりたい自分」は、はっきりしているのに、それにはほど遠くて、なかなか近づけない……。「こんな自分はもう嫌だ!」となったりは、していないでしょうか?
人は、自分のダメなところばかりを意識しがちですが、ダメなところばかりを見ていても、前に進めるわけではありません。ダメなところはあって当然、「今ある自分」をスタート地点としてそこから成長していけばよいのです。そのためにも、ダメなところを考える何倍もの時間をかけて、良いところについて考えてみましょう。ダメなところだと思っていたことが、逆に良いところだったことに気づくこともあるかもしれません。短所は、見方を変えると長所でもあるのです。
「I’m OK」という気持ちで「今あるそのままの自分」を受け入れることができると、他人や世間の評価に振り回されずに、のびのびとした自分でいられます。自信を持って、自分と向き合うことができます。そして、自分の良いところを、さらに生かしていくにはどうすればいいか」ということをも、考えられるようになるのです。
2004年、臨床心理士資格取得。病院研修ののち、民間の相談室や緩和ケア病棟での相談活動、高校でのスクールカウンセラー経験を経て、現在は、保育園の巡回相談員、小学校のスクールカウンセラーとして勤務。不登校児童や発達障害を持つ子供たち、およびその家族のサポートを主に行っている。家族や友人、地域社会などのコミュニティにおける彼らのありようを、多角的な視点から理解し、支えていくことを心掛けている。